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ブルドッグの睫毛重生
2025年6月8日
2025年6月3日配信
ブルドックはイングリッシュ・ブルドッグとか、ブリシュッシュ・ブルドッグと呼ばれることがある犬種です。
ブルドッグのクラブはイギリスでは1878年に、アメリカでは1890年に設立され、古い歴史を持ちます。古くブルドックが飼われた時代は性格や飼育目的が今日と違っていて荒々しい性格をしているイメージがもたれていました。しかし実際には友好的で温厚な犬種であるため、愛好家の間では高い人気がある犬種です。
今日では、ブルドッグはイギリス文化の国民的象徴する犬種になっています。ブルドッグの平均的成犬体重は雄で25Kg、雌で23Kg位です。ブルドックの短い鼻と押し込まれた顔は短頭犬種を代表する外貌を示し、健康面で問題を抱えています。
その代表的な眼科疾患が短頭種眼症候群(BOS; brachycephalic ocular syndrome)であり、その臨床所見が角膜潰瘍、ドライアイ、色素性角膜炎、眼瞼内反症、流涙症、眼球突出などの疾患を含みます。今回は、ブルドッグの睫毛重生についてのお話です。
2023年、フランスのJondeau, Cらによって「犬における睫毛重生の疫学および臨床的意義:291症例の回顧的検討」という論文が発表されました。
その発表では、52犬種の中で最も罹患率が高かった犬種(犬種の罹患比率)はブルドッグ(35.2%)、ついでアメリカン・コッカースパニエル(19.4%)、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(17.8%)、ボクサー(17.0%)、イングリッシュ・コッカー・スパニエル(12.2%)でした。
またこの発表では、睫毛重生に伴って眼不快感または眼病変を示す症例比率が高かった犬種(犬種内の罹患率)はブルドッグ(7.3%)で、次いでパグ(3.8%)、フレンチ・ブルドッグ(1.6%)でした。確かにこの発表では短頭犬種の睫毛重生が眼表面疾患を誘発しやすいことが示されていますが、睫毛重生の犬種発生率は短頭犬種以外の非短頭犬種でも高いことを示しています。この発表で特記すべきことは、ブルドッグの睫毛重生は短頭種犬の中でも特異的に罹患率が高く、また臨床的に問題となる合併症も罹患しやすいことを示していることでした。
睫毛重生とは眼瞼縁に位置するマイボーム腺開口部から1本または多数の発毛がみられる疾患です。まれにモール腺またツァイツ腺から発毛する場合もあります。犬全体の睫毛重生罹患率は0.8%~5.5%であると言われています。
睫毛重生は一般に、無症候性の場合と症候性の場合があり、症候性の症状は眼不快感または羞明、流涙、眼瞼痙攣、結膜充血、角膜潰瘍がみられます。
ブルドックの睫毛重生は高い発生頻度と症候性を示しますが、遺伝的原因については不明です。しかし最近、ブルドックと同様のブル・アンド・テリアに祖先を持つスタッフォードシャー・ブル・テリアにおいて、睫毛重生における遺伝的解析が報告されました。近い将来ブルドックにおいても、睫毛重生の遺伝的原因解析が進むかもしれません。
〈文責:DVMs眼科 印牧信行〉
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