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犬の避妊・去勢手術が及ぼす長期的な健康への影響;ゴールデンレトリーバーとラブラドールレトリバーの比較
2025年5月18日
はじめに
近年、犬の避妊・去勢手術(中性化)の実施率は上昇傾向にありますが、その長期的な健康影響についてはまだ不明な点が多く残されています。
本記事では、カリフォルニア大学デービス校が行った大規模調査(ゴールデンレトリーバー1015頭、ラブラドールレトリーバー1500頭を13年間追跡)の結果を解説します。
重要な研究結果
関節疾患リスク
ゴールデンレトリーバー
6ヶ月未満で中性化した場合、関節疾患リスクがオスで5.4倍(27% vs 5%)、メスで4倍(20% vs 5%)に増加
主に股関節形成不全(HD)と前十字靭帯断裂(CCL)が増加
ラブラドールレトリーバー
6ヶ月未満で中性化した場合、関節疾患リスクが約2倍(オス12.5%、メス11% vs 非中性化5%)
オスではCCLと肘関節形成不全(ED)、メスではHDが主に増加
がんリスク
ゴールデンレトリーバー(メス):
6ヶ月以降の中性化でがんリスクが3-4倍に増加(8-14% vs 3%)
リンパ肉腫(LSA)と肥満細胞腫(MCT)が顕著
その他の注目点
乳腺がん(MC)発生率は非中性化メスで低い(ゴールデン0%、ラブラドール1.4%)
子宮蓄膿症発生率はゴールデン1.8%、ラブラドール4%
臨床的アドバイス
1.犬種ごとのリスクを考慮:
ゴールデンレトリーバーは関節疾患とがんの両方のリスクが高い
ラブラドールレトリーバーは主に関節疾患リスクに注意
2.中性化時期の重要性:
6ヶ月未満の中性化は関節疾患リスクを大幅に増加させる
特にゴールデンでは慎重な時期の選択が必要
3.個別対応の必要性:
繁殖予定の有無
各犬種の特性
個体の健康状態を総合的に判断
新しい知見
1.犬種特異的な影響
同じサイズの類似犬種でも、中性化の影響が大きく異なることが判明
2.性ホルモンの保護的役割
ゴールデンレトリーバーのメスでは性ホルモンが特定のがんから保護的に働く可能性
3.体重増加の影響
関節疾患増加の主因は成長板への影響で、体重増加の影響は限定的
飼い主説明のポイント
1.「ゴールデンの場合、6ヶ月未満で中性化すると関節疾患リスクが5倍になります
2.「同じレトリーバーでも犬種によって影響が異なります
3.「メリット・デメリットを考慮して最適な時期を相談しましょう」
結論
中性化手術の影響は犬種によって大きく異なります。臨床現場では:
1.犬種特性を考慮した個別判断
2.ゴールデンの早期中性化には特に注意
3.科学的データに基づく正確な情報提供
以上が重要です。
(文責:メールマガジン編集部)2025年5月6日配信