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飼い主教育が信頼と満足度向上に寄与
2025年6月12日
2025/6/10 配信
飼い主教育が信頼と満足度向上に寄与
【概要】
この研究は、犬の飼い主に対する予防医療(PHC: Preventive Health Care)に関する知識、興味、獣医師とのコミュニケーション満足度、そして信頼感・共感度の関連を調査したものです。アメリカ国内の犬の飼い主738名を対象に、オンラインアンケートを実施しました。背景には、予防医療の受診率が低下している現状があり、その一因として、飼い主への情報提供の不足が指摘されています。
【主な結果と発見】
○知識と興味
飼い主が最も理解していたトピックは「精神的エンリッチメントの重要性(72.8%)」「QOL評価(69.6%)」「ワクチン(68.7%)」「寄生虫(63.7%)」でした。
一方理解度が低かったのは「品種ごとの疾患傾向(41.6%)」「歯科ケア(40.7%)」「高齢動物ケア(37.4%)」です。
興味の高いトピックは「QOL評価(44.6%)」「精神的エンリッチメント(40.7%)」「品種ごとの疾患傾向(38.9%)」「高齢動物ケア(37.4%)」でした。
○PHCの重要性に対する認識
95.4%が予防医療は健康、早期発見、QOLの向上、寿命延伸に重要と回答。85.9%がPHC知識は不安軽減に役立つと考え、90.1%が「より自分で管理できる」と感じていました。
○かかりつけ医との関係
86.3%の飼い主がかかりつけ獣医師を持ち、そのうち89%が満足と回答。PHC情報を獣医師から直接受け取ることを望む飼い主が79.9%に上り、それが信頼向上(81.2%)に寄与し、獣医師選定の決め手(85.6%)ともなっていました。
○信頼と満足度の関係
「ペットの最善を考えてくれる」と信じられる獣医師への信頼が、費用や立地よりも重要な要素とされ、信頼感と飼い主満足度は強く関連していました。
【臨床への応用】
○教育と説明の重要性
飼い主からの質問に丁寧に答え、予防医療に関する教育を行うことは、診察と同等に重要です。説明の時間が確保できない場合は、資料の配布や診察の枠を調整する工夫が有効です。
○個別対応のPHCが鍵
一人ひとりの飼い主に合わせた情報提供が、信頼構築と満足度向上につながり、飼い主と獣医師が共に意思決定を行う基盤になります。
○コミュニケーションスキルの研鑽
情報提供と透明性が信頼の土台です。コミュニケーション能力は、医学知識と同様に継続的に磨くべきスキルと位置づける必要があります。
【結論】
この研究は、飼い主に対する予防医療の教育が、信頼関係と満足度の向上に直接結びつくことを示しました。今後、臨床現場では単なる医療行為だけでなく、わかりやすく共感をもった説明と教育を通じて、飼い主との関係を強化することが求められます。
※『Pet Owner Education Leads to Trust & Satisfaction』
著者: Michelle Matusicky, DVM, MPH, DACVPM
発行年: 2025年3月
出典: The Ohio State University
https://www.dvm360.com/view/pet-owner-education-leads-to-trust-satisfaction