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犬猫の耳介に影響を与える代表的な疾患5選

2025年9月2日

 

2025年9月2日配信

犬猫の耳介に影響を与える代表的な疾患5選

この記事では、犬猫の耳介(ピンナ)に特に影響を与える代表的な皮膚疾患5つについて、その臨床的特徴、診断法、治療法を解説します。

 

1.耳介血管炎(Pinnal Vasculitis)
耳介の縁に炎症を起こし、脱毛、鱗屑、潰瘍、壊死を生じる疾患です。組織の酸素供給が不十分となることで病変が生じます。診断には生検が必要で、原因にはワクチン(特に狂犬病ワクチン)、薬物、昆虫咬傷、食物過敏症、感染症などが挙げられます。治療は原因の除去が基本であり、ペントキシフィリンが第1選択薬ですが、重症例では免疫抑制剤や外科手術(耳介部分切除術)が必要になることもあります。

 

 

2.猫の耳垢腺嚢胞腺腫症(Ceruminous Cystadenomatosis)
猫の耳介内面や耳道に多発する嚢胞性病変で、蜂蜜色の液体を含んだ青灰色の丘疹や水疱が特徴です。軽症例では治療不要ですが、重症では耳道を塞ぎ外耳炎を引き起こすため、CO2レーザーによるアブレーションが推奨されます。薬物療法は有効ではありません。

 

3.犬疥癬(Sarcoptic Mange, Scabies)
Sarcoptes scabiei(ヒゼンダニ)による感染症で、犬の耳介縁部から病変が始まることが多く、強い非季節性掻痒感、脱毛、鱗屑、痂皮を呈します。診断は皮膚掻爬検査ですが、検出困難な場合は治療反応性で評価します。現在の治療薬としてはイソオキサゾリン系薬剤(サロラネル、フルララネルなど)が推奨されています。

 

4.耳介辺縁脂漏症(Ear Margin Seborrhea)
ダックスフンドや垂れ耳の犬種に多く、耳介縁部に脂漏性の鱗屑や厚い痂皮が付着します。痒みや疼痛を伴う場合もあり、二次的に亀裂や出血を起こします。根本的な治療法はありませんが、脂漏性シャンプー(過酸化ベンゾイル、硫黄サリチル酸など)や局所脂肪酸製剤で管理します。

 

5.脂腺炎(Sebaceous Adenitis)
脂腺の炎症と破壊により皮膚が乾燥し、脱毛や鱗屑を引き起こす疾患です。プードルや秋田犬、サモエドに多く見られます。診断は生検により行い、治療は保湿性・角質溶解性シャンプーでの入浴、プロピレングリコールやベビーオイルの併用が推奨されます。シクロスポリンが唯一有効な全身療法です。

 

結論

これらの疾患は耳介に特異的あるいは最初に耳介に症状が現れることが多く、早期診断・適切な治療が臨床現場で重要です。
※『Top 5 Conditions Affecting the Pinnae』
著者:Andrew Rosenberg, DVM, DACVD
発行年:2019年
URL https://todaysveterinarypractice.com/top-5-conditions-affecting-the-pinnae/

(文責:メールマガジン編集部)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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