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犬と猫の結膜炎に対する治療薬の概要
2025年8月27日
2025年8月26日配信
犬と猫の結膜炎に対する治療薬の概要
この論文は犬と猫の結膜炎に使用される各種薬剤について、それぞれの病因や病態に応じた具体的な治療選択を獣医師向けに簡潔にまとめたものです。
結膜炎は、眼瞼や眼球表面を覆う結膜の炎症であり、主にアレルギー性、感染性、免疫介在性、涙液異常などが原因となります。
【主な疾患別治療法】
1.アレルギー性結膜炎(主に犬)
○ 主な症状は両側性の充血や脱毛、リンパ濾胞の形成。
○ ステロイドやNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)点眼が第一選択。
○ 補助療法として抗ヒスタミン薬、肥満細胞安定剤、血管収縮薬の点眼が使用可能。
○ 主な薬剤:ネオマイシン/ポリミキシン/デキサメタゾン、プレドニゾロン、ジクロフェナク、ケトロラックなど。
2.急性両側性の結膜浮腫・眼瞼浮腫
○ 即時型過敏反応(昆虫刺傷、ワクチン反応)による。
○ 速効性の全身性ステロイド(IMまたはIV)と抗ヒスタミン薬の投与が必要。
3.好酸球性結膜炎(主に猫)
○ 猫ヘルペスウイルス(FHV-1)関連が疑われる。
○ 治療の基本はプレドニゾロン点眼薬。
○ 長期管理では抗ウイルス薬投与が必要になる場合があり、角膜潰瘍のモニタリングが重要。
4.結節性肉芽腫性上強膜炎
○ コリー、コッカー・スパニエル、シェットランド・シープドッグに多い。
○ ステロイド点眼が有効であり、眼科専門医による評価が推奨される。
5.細菌性結膜炎
○ 犬:主に二次的で短期間の局所抗菌薬治療。
一般的薬剤:ネオマイシン、ポリミキシンB、バシトラシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、フルオロキノロン系など。
○ 猫:クラミジア、マイコプラズマ、ボルデテラが原因。
全身療法(ドキシサイクリン、プラドフロキサシン、アモキシシリン/クラブラン酸)が必須。
6.ウイルス性結膜炎
○主に猫ヘルペスウイルス(FHV-1)、犬ヘルペスウイルス。
○抗ウイルス薬(イドクスウリジン、トリフルリジン、シドフォビル、ファムシクロビル)を使用。
○リジンの使用については研究結果が分かれており、議論の余地がある。
7.涙液異常
○ シクロスポリンやタクロリムスが主な治療薬。涙液産生の改善を目的。
○ 神経性ドライアイにはピロカルピンの局所または経口投与を使用。
【臨床での注意点】
○ 猫の感染性結膜炎にはステロイドは原則禁忌。
○ 長期のステロイド点眼は角膜脂質沈着や感染リスクを高める。
○ 局所NSAIDsは角膜潰瘍を遅延させるリスクがあるため注意。
○ 猫へのポリミキシンBは稀にアナフィラキシーを起こすことがある。
【結論】
結膜炎治療は原因や動物種ごとに適切な薬剤を選択し、副作用リスクや薬剤特性を考慮して管理することが重要です。獣医師は治療開始前に原因を明確にし、慎重な経過観察を行う必要があります。
※『Drugs Used to Treat Conjunctivitis in Cats & Dogs』
著者: Renee Carter, DVM, DACVO
発行年: 2022年8月
https://todaysveterinarypractice.com/drugs-used-to-treat-conjunctivitis-in-cats-dogs/