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高齢猫の変形性関節症(OA)における6つの主要な治療法

2025年8月19日

2025年8月19日配信

 

『高齢猫の変形性関節症(OA)における6つの主要な治療法』

 

この論文では、高齢猫における変形性関節症(OA)の主要な治療法を紹介し、各治療法の実際の臨床応用について解説しています。

【研究の背景と目的】
高齢猫の最大92%が変形性関節症(OA)を患っていると報告されています。猫のOAの症状は犬や人と異なり、歩行障害よりも行動の変化(ジャンプを避ける、毛づくろいの変化、攻撃性の増加、トイレ外での排泄など)として現れます。この研究は、高齢猫に適したOAの一般的な治療法を明確にすることを目的としています。

【重要な治療法と発見】
1.疼痛管理
○ 猫のOA疼痛管理にはNSAIDs(メロキシカム、ロベナコキシブ)が主に用いられますが、長期投与はアメリカでは未承認であり、副作用(特に慢性腎疾患)が懸念されます。
○ NSAIDs使用時は、猫を十分に水分補給させ、飼い主に腎機能悪化の兆候を監視するよう指導します。NSAIDsの投与量は最低限に抑え、定期的な血液検査と尿検査を推奨します。
○ 他の鎮痛薬としてトラマドール、ガバペンチン、フルネベトマブ(抗NGF抗体)が検討されています。特にフルネベトマブはFDA承認済みで、疼痛緩和に有効とされますが、皮膚の副作用に注意が必要です。

 

2.環境調整
○ OA猫が生活しやすい環境整備(階段やスロープ、暖かく柔らかい寝床、アクセスしやすいトイレや食器の設置)を行うことで、生活の質が向上します。

 

3.体重管理
○ 肥満はOAを悪化させるため、適正体重の維持が重要です。食事管理、パズル型給餌器、低カロリー食、運動の促進が推奨されます。

 

4.運動調整
○ 適切な運動は筋肉量の維持、関節可動域の改善、体重管理に役立ちます。専門家によるリハビリや家庭での適度な遊びを推奨します。

 

5.関節サプリメント
○ オメガ3脂肪酸(EPA、DHA)、緑イ貝エキス、グルコサミン、コンドロイチンの使用が推奨され、特にオメガ3脂肪酸は活動性やジャンプ能力の改善に効果的とされています。

 

6.外科治療○ OAの原因となる整形外科的問題(前十字靭帯損傷、股関節脱臼など)がある場合、適切な外科手術(TPLO、TTA、大腿骨頭切除術、人工股関節置換術)がOAの進行を抑え、早期の機能回復に有効です。

 

【実際の臨床応用】
臨床現場では、複数の治療法を組み合わせたマルチモーダル治療を患者ごとに個別化して実施することが重要です。特に副作用リスクを考慮したNSAIDs使用、環境整備、体重管理、関節サプリメントは日常的に取り入れやすく、飼い主教育を含めて積極的に推奨されます。外科治療は適応症例に対して早期に行うことが推奨されます。

 

【結論】
OAは高齢猫に非常に一般的であり、行動の変化に注目した早期発見とマルチモーダル治療によって、猫の生活の質を大きく改善できます。獣医師は各治療法のメリットとリスクを理解し、飼い主と協力しながら猫の健康を守ることが求められます。

※『Top 6 Osteoarthritis Treatment Options for Geriatric Cats』
著者: Kate Barnes, DVM, MS, DACVS-SA, Texas A&M University
発行年: 2025年3月

https://www.cliniciansbrief.com/article/oa-treatment-pain-cats

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