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H5N1高病原性鳥インフルエンザの「猫問題」-生乳・生食経由の感染と重篤な神経・呼吸器病変-
2026年1月16日
2026年1月13日配信
H5N1高病原性鳥インフルエンザの「猫問題」
-生乳・生食経由の感染と重篤な神経・呼吸器病変-
【はじめに】
高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)H5N1は、これまで「家禽・野鳥の感染症」として理解されてきました。
しかし2024-2025年にかけて状況は明確に変化しています。
●北米での乳牛クラスター
●それと並走する形での猫の感染・死亡例の増加
●生乳・生食を介した家庭猫の重症例
●完全屋内飼育猫での感染報告
これらは、猫がH5N1の感受性動物であり、かつ家庭環境でも感染し得ることを強く示しています。
獣医療現場では、院内感染対策と飼い主指導のアップデートが急務となっています。
【何が新しい?】
① 乳牛クラスターと並走する「猫のH5N1」
2024年、乳牛のH5N1感染が報告される中で、同一地域・同一農場関連の猫からH5N1が検出されました。
Burroughらの報告では、
●猫からH5N1ウイルスを検出
●肺・脳・全身臓器におけるウイルス抗原分布を病理学的に確認
●猫が終末宿主ではなく、全身性に感染・発症することを実証
=重要点=
猫は「偶発的に軽く感染する動物」ではなく、重篤な全身感染を起こし得る種であることが、病理学的に裏付けられた。
② 生乳・生食を介した家庭猫の重症感染
2025年には、生乳(未殺菌ミルク)摂取後に発症した家庭猫からH5N1が分離された症例が報告されました。
●同一家庭の猫複数頭が発症
●2頭死亡、1頭回復
●呼吸器症状+神経症状を呈する重篤例
=これが意味すること=
●H5N1は経口感染が成立
●「鳥や野外との接触がない猫」でも、食餌由来で致死的感染が起こり得る
●生肉・生乳志向の飼育文化が、新たなリスク因子として浮上
③ 完全屋内飼育猫でも感染:ヒトを介した持ち込み
CDCのMMWR(2025)では、乳業従事者の家庭で飼育されていた完全屋内猫2例のH5N1感染が報告されました。
●猫は屋外に一切出ていない
●飼い主が乳牛と接触する職業
●猫に重度の呼吸器・神経症状
= 臨床的インパクト=
●ヒトの衣類・靴・手指を介した間接的家庭内暴露が成立し得る
●「屋内飼育=安全」という前提はもはや成立しない
【猫のH5N1感染:臨床像と病理】
臨床症状(報告例から)
●急性発症
●高熱、沈鬱
●呼吸困難
●神経症状(振戦、運動失調、痙攣)
●急速な転帰(数日以内の死亡)
病理学的特徴
●肺:重度壊死性肺炎
●脳:非化膿性脳炎
●多臓器(肝・脾・腸)でのウイルス抗原検出
=鑑別に挙げるべき状況=
●原因不明の急性神経症状+呼吸器症状
●同居猫の突然死
●生食・生乳摂取歴
●畜産関連職従事者の家庭猫
【院内感染対策:今すぐ見直す点】
●猫の急性呼吸器・神経症状ではH5N1を鑑別に含める
●疑い例では
・個室隔離
・PPE(手袋・マスク・アイガード)
・エアロゾル発生処置を最小限に
●検体採取・搬送は公衆衛生当局・検査機関の指示に従う
=重要=
H5N1は人獣共通感染症。
「猫の病気」ではなく、院内・家庭内バイオセーフティの問題として対応が必要。
【餌指導:明確に伝えるべきこと】
●猫に生乳・未殺菌乳製品を与えない
●生肉・生食を避ける(特に鳥肉・牛由来製品)
●「自然」「本来の食性」という説明では感染症リスクは相殺されない
=この話題は、栄養学ではなく感染症学の問題として説明することが重要=
【まとめ】
2024-2025年の報告により、H5N1は猫にとって致死的な全身感染症であることが明確化
●生乳・生食、ヒト経由の持ち込みなど、家庭内感染経路が現実化
●獣医療現場では
・鑑別診断の更新
・院内感染対策
・飼い主への食餌・生活指導 の即時アップデートが求められる
※参照※
※ Burrough ER, et al.
Highly pathogenic avian influenza A(H5N1) virus infection in dairy cattle and cats Emerging Infectious Diseases, 2024
※ Centers for Disease Control and Prevention (CDC).
Highly Pathogenic Avian Influenza A(H5N1) Virus Infection in Indoor Cats – United States, 2024-2025
MMWR, 2025
※ Isolation of highly pathogenic avian influenza A(H5N1) virus from cats after consumption of raw milk
Emerging Infectious Diseases, 2025
(文責:メールマガジン編集部)

