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抗NGFモノクローナル抗体はOA疼痛管理をどう変えたか ~NSAIDsの代替・補完としての現在地~
2026年2月3日
2026年2月3日配信
抗NGFモノクローナル抗体はOA疼痛管理をどう変えたか
~NSAIDsの代替・補完としての現在地~
【はじめに】
犬・猫の変形性関節症(OA)は高齢化とともに確実に増加しています。一方で、NSAIDsの長期使用に対する安全性の懸念や、
猫ではそもそも治療選択肢が限られるという課題がありました。
こうした背景の中、抗NGF(神経成長因子)モノクローナル抗体は、炎症抑制とは異なる機序で疼痛を軽減する新たな治療
クラスとして定着しつつあります。
現在、日本では
○ 犬:リブレラ®(ベディンベトマブ)
○ 猫:ソレンシア®(フルネベトマブ)
が使用可能となり、エビデンスも蓄積されてきました。
【抗NGF抗体とは何が違うのか?】
抗NGF抗体は、疼痛の増幅に関与するNGFを中和することで、
●末梢感作
●中枢感作 の一部を抑制します。
=NSAIDsとの最大の違い=
●NSAIDs:炎症性メディエーター(COXなど)を抑制
●抗NGF抗体:「痛みが強くなる仕組み」そのものを抑える
そのため、腎・消化管・肝機能への直接的負担が少ない点が臨床上の大きな利点です。
【犬:リブレラ®(ベディンベトマブ)の最新知見】
NSAIDsとの「初の直接比較RCT」
2025年、犬OA疼痛においてベディンベトマブとメロキシカムを直接比較したRCTが報告されました。
○主な結果
●COIスコアは両群で有意に改善
●改善度は同等(統計学的有意差なし)
●有害事象数はベディンベトマブ群で少ない
●試験完走率はベディンベトマブ群で高い
○臨床的な意味
●「効き目は同程度になり得る」
●「長期継続・忍容性では抗NGF抗体が有利な可能性」
=日本での実践的使い分け=
●NSAIDsで消化器症状が出た犬
●腎疾患・高齢でNSAIDs継続が不安な症例
●飼い主の投薬負担を減らしたい場合
→ リブレラ®は第一候補になり得る
【猫:ソレンシア®(フルネベトマブ)のエビデンス】
プラセボ対照・二重盲検RCTの意義
猫OAでは症状が行動変化として現れやすく、評価が難しいのが実情です。
フルネベトマブは、オーナー報告アウトカム(CSOM)を主要評価項目としたRCTで有効性が示されました。
○主な結果
●CSOM:Day28・56で有意改善
●オーナー全体評価:有意に改善
●獣医師評価の関節痛:後期評価で差
●QOLの改善を飼い主が実感しやすい
=臨床的な意味=
●猫OA疼痛に対する数少ない確立した治療選択肢
●NSAIDsを避けたい/使えない症例では事実上の第一選択
【副作用・安全性:必ず押さえておきたい点】
○犬(ベディンベトマブ)
●全体として副作用頻度は低い
●報告例:
・注射部位反応
・一過性の元気消失
・NSAIDsと比較して消化器症状は少ない
=注意点=
●劇的に活動性が上がることで、潜在的な整形外科疾患が顕在化するケースあり
●運動制限・体重管理の指導は必須
○猫(フルネベトマブ)
○全体の有害事象率はプラセボと大差なし
○皮膚関連有害事象(掻痒、皮膚炎、脱毛など)がやや多い
=実務的ポイント=
●投与前に皮膚疾患の既往を確認
●投与後1-2か月は皮膚状態のチェックをルーチン化
●軽度の場合は経過観察で改善することも多い
【QOLという「説明しやすいアウトカム」】
2024年の解析では、抗NGF抗体投与後14日という早期からQOLが改善することが示されました。
これは、
●疼痛スコア
●跛行評価
だけでなく、「その子らしい生活が戻る」という視点で飼い主に説明できる強みです。
=飼い主説明では=
「痛みをゼロにする治療」ではなく、「動きやすく、快適に生活できる時間を増やす治療」
として伝えると理解が得られやすくなります。
【まとめ~抗NGF抗体はどう使うか~】
○犬
NSAIDsと同等の鎮痛効果が期待でき、忍容性・継続性で優位性
○猫
エビデンスに基づく現実的な第一選択肢
○共通
●月1回注射でアドヒアランスが高く、QOL改善を示しやすい
●抗NGFモノクローナル抗体は、
●「NSAIDsの代替」から「OA疼痛管理の中核」へと役割を広げつつあります。
※参照文献※
※ Innes JF, et al.
A randomised, parallel-group clinical trial comparing bedinvetmab to meloxicam for the management of canine osteoarthritis
Frontiers in Veterinary Science, 2025
※ Gruen ME, et al.
Frunevetmab, a felinized anti-nerve growth factor monoclonal antibody, for the treatment of pain from osteoarthritis in cats
Journal of Veterinary Internal Medicine, 2021
※ Reid J, et al.
Measuring the effect of the anti-nerve growth factor antibodies bedinvetmab and frunevetmab on quality of life in dogs and cats with osteoarthritis
Frontiers in Veterinary Science, 2024
(文責:メールマガジン編集部)

