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最新FIP治療プロトコールアップデート

2025年7月4日

2025年7月1日配信

 

最新FIP治療プロトコールアップデート
=レムデシベル・GS-44152・モルヌピラビルの実践的ガイド=

はじめに
従来ほぼ致死的と考えられてきた猫伝染性腹膜炎(FIP)も、近年の抗ウイルス薬の登場により劇的に治療成績が向上しています。本号では、注射/経口いずれも高い寛解率を示す「レムデシビル」「GS-441524」に加え、最新のモルヌピラビル(ラゲブリオ)についても解説し、臨床現場ですぐに役立つポイントをまとめました。

1. レムデシビル+GS-441524の効果
○投与例:28頭のFIP猫を84日以上投与
初期:レムデシビル10 mg/kg IV×4日→6 mg/kg SC×80日超
重症例は15 mg/kg以上に増量
中盤以降、経口GS-441524への切替あり
○成績
6ヶ月生存率 96%(初期48時間死亡例除く)
低用量群の再発30%に対し、高用量・経口移行群は再発ゼロ
○安全性:注射部位反応のみで重篤例なし

 

2.臨床応用のポイント

○早期マーカー:治療開始1~2週での発熱消失・腹水消失は長期予後良好のサイン
○用量調整:眼症状・神経症状例は15mg/kg/日以上を検討
○経口への移行:注射困難例はGS-441524錠剤で維持可能
○併用療法:コルチコステロイドや抗血栓薬は現時点で有用性未確定

 

3. モルヌピラビル(ラゲブリオ)の位置づけ
○機序:ウイルスRNA合成時に複製ミスを誘導する経口ヌクレオシドアナログ
○投与例:15mg/kgを1日2回、84日間投与が一般的
○成績例:
モノセラピー単独:寛解率約72%
レスキュー療法:再発例に適用し100%寛解
GS-441524比較試験でも98%寛解と同等の高成績
副作用:軽度の消化器症状中心で許容範囲内

 

4. 法的・倫理的留意点
薬剤入手:多くの国で法的未承認のため、入手可否を必ず飼い主と確認
同意取得:治療リスク・コスト・法的グレーゾーンを十分説明し、文書で同意を得る

今後も最適投与量や投与期間、併用療法の有効性などが研究段階にあります。最新知見をキャッチアップしながら、安全かつ効果的なFIP治療にお役立てください。

(文責:メールマガジン編集部)

【参照】

https://www.cliniciansbrief.com/article/feline-infectious-peritonitis-treatment-outcomes

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