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犬のクッシング症候群(HAC)診断に関する実践的ガイダンス
2025年12月23日
2025年12月23日配信
犬のクッシング症候群(HAC)診断に関する実践的ガイダンス
研究の概要と目的
本資料は、「Standards of Care」という実臨床を重視した獣医師向けガイドラインからの抜粋であり、
特に診断が難しい犬の副腎皮質機能亢進症(HAC、通称クッシング症候群)への対応に焦点を当てて
います。
犬では比較的よくみられる内分泌疾患で、猫では非常に稀です。主に下垂体腺腫(ACTH依存性)
によるものが多く、副腎腫瘍(ACTH非依存性)は少数です。
主な診断上の課題と重要ポイント
1.HACの診断は臨床症状が前提
○病歴、身体検査、臨床病理検査から疑われることが多いですが、確定診断には複数の検査が必要な
ことが一般的です。
○重要:臨床症状がない場合、たとえALPの上昇などがあっても検査は推奨されません。
2.副腎軸検査(Adrenal Axis Testing)
○スクリーニング検査(例:低用量デキサメタゾン抑制試験 [LDDST] やACTH刺激試験)および鑑別
検査がありますが、検査結果は必ず臨床症状と照らし合わせて解釈する必要があります。
3.治療と予後
○治療法: 内科的管理、外科手術、放射線療法の選択肢があります。
○予後: 臨床症状のコントロールは一般的に良好ですが、血栓塞栓症などの合併症が生命を脅かす
ことがあります。
実臨床で直面する特殊シナリオへの対応
本稿では、特に診断が難しい以下のケースに関して、専門家による実用的な助言が紹介されています。
1. 併存疾患をもつ犬におけるHAC検査
○他の疾患があるとスクリーニング検査で偽陽性になるリスクが上がります。
例: 糖尿病などの管理が難しい併存疾患がある場合は、病状が安定したタイミングで検査を行う
ことが推奨されます。
2. フェノバルビタール投与中の犬
○フェノバルビタールは、PU/PD(多尿・多飲)、多食、ALP上昇など、HACと類似した症状を引き起こす
可能性があります。
○研究ではフェノバルビタールが副腎軸検査に有意な影響を及ぼすという明確な証拠はありませんが、
他の抗てんかん薬に切り替え、臨床症状が持続するかを観察。その上で必要なら検査を実施。
その他の診断的注意点(抜粋)
●非典型HAC(Atypical HAC)や隠れたHAC(Occult HAC)
●試薬の血管外漏出(extravasation)時の対応
●両側副腎腫瘍または結節がある場合の判断
これらについては、本稿では詳細に触れられていませんが、Standards of Care本体ではさらに深い臨床的
判断基準が提供されています。
結論
犬のクッシング症候群の診断は、一見シンプルに見えても臨床症状や併存疾患の存在により複雑化する場合
が多くあります。本資料は、現場での実際の判断をサポートする実用的なアドバイスを提供しており、特に
非典型例や併存疾患を持つ症例の検査・治療方針において有用です。
※『Hyperadrenocorticism in Dogs: Tricky Diagnostic Scenarios』
著者: Standards of Care Team
発行年: 2025年
出典: Clinician’s Brief (July 2025)
https://www.cliniciansbrief.com/article/standards-hyperadrenocorticism-dogs
(文責:メールマガジン編集部)

