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犬の眼に関わる三叉神経の役割
2026年1月6日
2026年1月6日配信
犬の眼に関わる三叉神経の役割
犬の眼異常を伴う中枢神経系疾患は、眼異常所見に加えて、けいれん、起立困難、旋回、
斜頚といった大脳皮質または脳幹の機能不全を伴うことが多く、MR検査が行われます。
MR検査はブロードファースト戦略(注1)が必要であり、またそれに伴い眼症状と
中枢神経系障害部位との関係を事前に学習しておくことが大切だと言われています。
今回は、眼に関連する第5脳神経の三叉神経のお話です。
三叉神経障害に伴う眼症状は、角膜知覚の低下・消失、眼瞼反射低下、ドライアイ、
神経栄養性角膜症、露出性角膜症などがみられます。また一般徴候として下顎下垂、
流涎、顔面知覚鈍麻、咀嚼筋萎縮がみられます。
三叉神経は脳神経最大の神経で、眼瞼裂を通過する眼神経(V1)、正円孔を通過する
上顎神経(V2)と卵円孔を通過する下顎神経(V3)の3枝に別れる脳神経です。
この神経は運動性神経と感覚性神経とを備える混合神経です。運動性神経は咀嚼筋
(咬筋、側頭筋など)を支配するV3でのみ認められます。
これに対して、感覚性神経はV1、V2とV3の全てで含まれています。眼科領域における
三叉神経の役割は主にV1に集中しています。V1は眼球そのもの、特に角膜、結膜
および強膜の一部、または上眼瞼(内側より)の知覚を司っています。
この感覚入力は、眼の防御的な恒常性維持機構、すなわち瞬き反射や反射性涙液分泌の
開始に不可欠であり、眼表面の微細な損傷や乾燥に対する第一の防御ラインを形成しています。
角膜反射(注2)や内眼角反射(注3)の反射求心路はV1です。また瞳孔散大筋を支配する
交感神経の線維は、V1の分枝である長毛様体神経に合流して眼球内に入ります。
犬の三叉神経にはV1、V2、V3の起点とする三叉神経節があります。この三叉神経節は
頭蓋底中央部の側頭骨岩様部にある三叉神経管腔に存在します。三叉神経節はガッサー神経節
とも言われ、顔面領域からの大部分の体性感覚を担当する一次感覚ニューロン細胞体の集積
部位になります。
また三叉神経節の基部となる三叉神経根は橋腹外側面の中小脳脚のすぐ腹側に位置します。
ついで一次感覚ニューロンの中枢突起がシナプスを形成する2次感覚ニューロン細胞体は脳幹の
2つの感覚核として存在し、顔面領域から触覚や圧覚などの感覚情報を中継する主感覚核
(橋の外側部)と、顔面領域から痛覚、温度覚および粗大な触覚などの感覚情報を中継する脊髄
三叉神経核(延髄外側~C2レベルまで連続する縦長の核)からなります。
また咀嚼筋の固有受容感覚を司る咀嚼筋の筋紡錘は本来の一次感覚ニューロンとして働き、
その細胞体が中脳路核(中脳腹側部から橋背側に伸びる縦長の核群)に位置します。また咀嚼筋
を支配するV3の運動性神経核は、橋の中央よりやや吻側に位置します。
このように三叉神経は、末梢神経節である三叉神経節と、単一の核ではない、それぞれ異なる機能
を持つ3つの感覚神経核と1つの運動神経核からなる三叉神経核複合体を構成しています。
これらの解剖学的位置情報が、三叉神経の障害部位を特定する判断に役立つます。
注1:ブロードファースト戦略(Broadfirst strategy):限られた麻酔時間の中で最も重要な情報を確実に
得るために、広範囲(Broad)で基本となる撮像シーケンスを最優先(First)で撮影する診断アプローチを指す。
注2:角膜反射:角膜に軽く刺激した際に生じる瞬き反応。反射求心路はV1全体によるもので、上下眼瞼の
皮膚に刺激が加わった際に生じる瞬目反射(眼瞼反射)と同じです。
注3:内眼角反射:内眼角を軽く刺激した際に生じる瞬き反応。反射求心路はおもにV1分枝の滑車下神経に
限局したものです。
〈文責:DVMs眼科 印牧信行〉
当院では、「眼科健診アイ・ドック」(22,000円;税込)を、飼い主様から直接お申し込みも受け付けて
おります(獣医師の紹介状不要)。なお動物病院から申し込まれた場合は、飼い主様への報告書とは別に、
紹介動物病院様への報告を無料で行なっております。
また当院の眼科診療科は、動物の視覚を維持させるための適時適剤の点眼を推奨し、一生涯にわたり、
動物と飼い主様との「絆」を保って頂きたいと願っております。この目的で当院「眼科健診アイ・ドック」
を開設しています。健診に際しては、飼い主様に動物の保定をお願いして、「安全で適切な動物の扱い方」
と「点眼方法」を飼い主様にお教えしております。
是非当院の「眼科検診アイ・ドック」をご利用ください。https://yokohama-dvms.com/eyedock/

