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ケアーン・テリアの眼性黒色症
2025年5月11日
2025年5月13日配信
病名は時代とともに変わるものです。その事例として今回は、ケアーン・テリアの眼性黒色症を取り上げます。
ケアーン・テリアは映画「オズの魔法使い」(1939年)のトト役として起用された犬で知られ、小さくても活発で勇敢な犬種です。この犬種の歴史は古く、スコットランドのハイランド地方を原産とするテリア犬種で、勇敢な犬です。この犬種の歴史は古く、スコットランドのハイランド地方を原産地とするテリア犬種で、その名称は「岩山で害獣を守る使役犬」の意味に由来します。
ケアーン・テリアの眼性黒色症は以前、「続発緑内障を伴う眼性黒色症」とか、「色素性緑内障」などの診断名で知られていました。その発生は眼球内のぶどう膜に存在する色素細胞が増殖することで起こります。その結果、重篤例になると房水流出路が閉塞し、眼圧が上昇し緑内障を引き起こします。この疾患は2歳から14歳のケアーン・テリアでよくみられます。 その原因は遺伝性ですが、正確な遺伝様式は不明です。この疾患は非常にゆっくり進行する非腫瘍性疾患で、その臨床症状が4つの段階に分類されることから眼性黒色症という病名が一般的名称になりました。
初期(Stage1)
虹彩根部に小さな色素沈着斑が認められ、眼圧は正常範囲内です。視覚への影響はほぼありません。
眼科検診で定期的な経過観察が推奨されます。
中等度の時期(Stage2)
虹彩根の肥厚が存在し、強膜/上強膜に小さな色素沈着斑が存在します。一部の症例では眼圧がわずかに上昇する場合があります。
眼圧コントロールのための治療が行われる場合もあります。
進行期(Stage3)
強膜/上強膜の色素沈着斑はより広範囲に広がり、通常は数mmの大きさで認められます。不規則な虹彩表面になることがあります。
虹彩は薄くなり、瞳孔の収縮が減少し、調節障害を引き起こします。また色素粒子が房水内に浮遊し、角膜裏面に沈澱することがあります。
眼圧上昇は多くの症例でみられ、また視神経乳頭が障害されます。緑内障治療(点眼薬、外科的処置など)が必要となる時期です。
末期(Stage4)
重度の緑内障により視覚が完全に喪失する時期です。持続的な痛みが生じる場合は、眼球摘出や義眼の検討が必要になります。
ケアーン・テリアは眼性黒色症の遺伝リスクが報告されていることから、早期発見と適切なケアが視覚を維持させる要点になります。
眼性黒色症はまれにボクサーやラブラドール・レトリーバーなどでも発症することが報告されているため、他の犬種においても注意が必要な疾患です。
〈文責:DVMs眼科 印牧信行〉
なお当院では、眼科専門医による「眼科検診アイ・ドック」(22,000円;税込)を紹介状になしで飼い主様から直接受け付けております。
また動物病院から申し込まれた場合は、飼い主様への報告書とは別に、紹介病院様への報告を無料で行なっております。
当院の「眼科検診アイ・ドック」を是非ご利用ください。
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