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犬の加齢白内障とフライト・ゾーン
2025年9月7日
2025年9月9日配信
犬の加齢白内障とフライト・ゾーン
動物は私達が想像する以上に複雑な習性やメカニズムによって成り立っていて、動物に対する私達の理解が不十分であると、私達は動物との距離感を縮めることができません。
その不十分な理解になりやすい事柄の一つが高齢犬の視覚です。今回は犬の加齢白内障についてのお話です。
犬の視覚の中で、人よりも際立って違う視覚能の一つが視野です。犬の視野は明らかに私達の想像を超えた範囲で物や光を認知しています。それが単眼視野領域の視覚です。
犬の視野は、人と同じように両眼で物や光を認識する両眼視野と、左右の眼が独立して物や光を認識する単眼視野で構成されています。
一般的な犬の視野は両眼視野が60度、左右それぞれの単眼視野が90度で、合わせて240度です。両眼視野領域は両眼視差による物のコントラスト、奥行き視覚、立体視に優れていて、単眼視野領域は大きな物の識別や明暗、動きなどを認知し、物の気配を識別します。牧羊犬が羊の群れを捉えるために頭部の動きを一瞬、静止させる動作は、単眼視野を最大限に活用させる瞬間です。犬はこの単眼視野領域、ならびにその両眼視野領域との境界で潜在的脅威に直面すると、犬は本能的に威嚇や遠ざかる行動(逃避反応:フライト反応)を示します。この範囲をフライト・ゾーン(またはパーソナル・スペース)と呼びます。もちろん両眼視野領域にも存在しますが、飼っている人とのゾーンはほとんどないのが一般的です。
しかし点眼できない犬では両眼視野領域でもフライト・ゾーンがみられます。
犬が高齢になると水晶体中心部(核)の蛋白質密度が高くなって核が固くなります。これを核硬化症と呼びます。核硬化症は加齢による自然な生理的変化ですが、重度核硬化症では近視化による視覚が問題になります。核硬化症は水晶体が青白い外観を示すことで、よく白内障と見間違えます。白内障とは視界を遮る水晶体の混濁です。高齢になって起こる白内障を加齢白内障と呼び、小型犬では9歳以上、大型犬では7歳以上でみられます。その加齢白内障は核周囲の混濁を示す層板白内障であることが特徴ですが、水晶体皮質で多焦点性混濁がみられます。そのため視界はおもに水晶体中央部で遮られ、両眼視野領域における階段の段差や真正面の尖ったものの識別が困難になります。
水晶体赤道部の皮質は比較的、混濁が軽度であり、場合によっては単眼視野領域の視覚が維持されています。「瞳が白っぽくなった」、「真正面の物にぶつかるようになった」との所見だけでは飼い主と獣医師との視覚認識が不一致になりやすく、加齢白内障の把握所見として不十分です。
眼科は症例の一生を通じて、時々刻々、症例の生体変化に対応しなければならない診療科であり、また症例に対する飼い主の視覚認識を常に注視しながら診療に当たらなければならない診療科でもあります。
その対象事例の一つが犬の加齢白内障です。飼い主の方が動物の視覚に不安を抱えている場合は、早期に当院(DVMsどうぶつ医療センター横浜)の「眼科検診アイドック」を受けるのがお勧めです。
〈文責:DVMs眼科 印牧信行〉
当院では、「眼科検診アイドック」(22,000円;税込)を、飼い主様から直接お申し込みも受け付けております(獣医師の紹介状不要)。なお動物病院から申し込まれた場合は、飼い主様への報告書とは別に、紹介動物病院様への報告を無料で行なっております。
また当院の眼科診療科は、動物の視覚を維持させるための適時適剤の点眼を推奨し、一生涯にわたり、動物と飼い主様との「絆」を保って頂きたいと願っております。この目的で当院「眼科検診アイ・ドック」を開設しました。加えて検診に際しては、飼い主様に動物の保定をお願いして、「安全で適切な動物の扱い方」と「点眼方法」を飼い主様にお教えしております。
是非当院の「眼科検診アイ・ドック」をご利用ください。
眼の健康診断「アイ・ドック」 https://yokohama-dvms.com/eyedock/
獣医師専用お申し込みフォーム https://bit.ly/46rgM0U
DVMs眼科のご紹介 https://yokohama-dvms.com/sp/ophthalmology/