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犬の眼に関わる顔面神経の役割とその障害

2026年2月17日

2026年2月17日配信

 

犬の眼に関わる顔面神経の役割とその障害

犬の顔面神経はおもに「顔の表情を動かす」役割を担っている他に、「涙や唾液の分泌」や

「味覚」などの機能を持つ脳神経で、第VII脳神経とも言います。顔面神経は眼の機能に異常を

示す顔面神経麻痺の診断にとって重要です。今回は顔面神経の話です。

 

顔面神経麻痺に伴う眼症状は、瞬きができなくなること(兎眼症)やドライアイ(乾性角結膜炎)が挙げられ、

また二次的所見として角膜乾燥で生じる角膜潰瘍がみられます。
犬の顔面神経麻痺の原因はその約75%が原因不明の特発性ですが、顔面神経近接の炎症で生じる中耳炎および内耳炎、

末梢顔面神経障害を生じる甲状腺機能低下症、顔面神経の物理的損傷を生じる外傷や腫瘍などがあります。

 

顔面神経は、
①運動成分(特殊内臓性遠心性神経:SVE<橋尾側から延髄吻側の外側網様体腹側に位置する顔面神経核から発する>)
②副交感神経成分(一般内臓性遠心性神経:GVE<橋被蓋の上唾液核から発する>)、および
③感覚成分(特殊内臓性求心性神経SVA<延髄の孤束核に終止する>と一般体性求心性神経

:GSA<脳幹の三叉神経脊髄路核に終止する>)の三つを包含する混合神経です。

 

ほとんどのSVEは顔にある「表情筋」と呼ばれる筋肉を制御し、GVEは涙腺および唾液腺(顎下腺や舌下腺)の

分泌を促します。感覚成分であるSVAは舌の前3分の2にある味蕾による味覚を司り、またGSAは外耳道皮膚および

耳介凹面(内側面)の感覚を司ります。

 

犬の顔面神経は脳から出たあと、内耳神経(第VIII脳神経)と一緒に内耳道に入り、ついで顔面神経だけが側頭骨内の

顔面神経管に入り管内で分岐して、SVE(中耳内の鐙骨筋支配神経を除く)は茎乳突孔を通過してから頭蓋外へと脱出し、

その他の神経成分は茎乳突孔を通過しないで頭蓋外に出ます。茎乳突孔を通過する神経経路の障害か否かで臨床症状が変わります。

 

すなわち、
①「瞬きができない」「唇が垂れる」だけの症状がみられる場合はSVEの障害を示し
②上記の症状に加えて「涙が出ない(ドライアイ)」の症状がみられる場合は顔面神経全体の障害を示します。

 

また、顔面神経麻痺は臨床上しばしばホーナー症候群(縮瞳、眼瞼下垂、瞬膜突出、眼球陥没)と同時に発症

することがあります。それぞれ異なる神経系障害ですが、それぞれの原因神経の走行経路が中耳の鼓室胞あるいは

その壁で非常に近接していることから、中耳での障害が両者の同時発症の原因に繋がります。

 

さらにこの両者の同時発症に加えて、前庭障害(ふらつき、眼振)がみられた場合は、
①延髄・橋を走行する眼交感神経の障害(中枢性障害)、あるいは
②平衡感覚異常を示す重度の内耳炎(末梢性障害)との併発が疑われます。

 

この両者の鑑別診断は、中枢性障害であればナックリング検査(固有位置感覚検査)による意識的固有感覚の欠如や

四肢の不全麻痺がみられことから行います。ナックリング検査の異常は多くの脊髄疾患でみられる所見ですが、

脳・脳幹の疾患でもみられる所見です。

 

顔面神経障害の診断は顔面神経が混合神経であることから、多様な症状や所見を把握することが大切です。

その診断ポイントとして眼に関する臨床所見は重要です。

 

〈文責:DVMs眼科 印牧信行〉

 

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